iPhoneとXperia

 会社の知人から面白い話を聞いた。彼は、iPhone, Xperia, ガラケー、三本のケータイを持っている。これらを人前で使っていると、iPhoneXperiaを触らせてほしい、と言われるそうだ。そこで彼が気付いたことには初めて触る人であってもiPhoneはほとんど何も聞かずに操作できるのに、Xperiaの操作方法については質問されることが多いのだそうだ。iPhoneのインタフェース、デザインが優れていることを示す一つの証左だと思う。この差は何から生じるものなのだろうか?


 僕がこの話を聞いて思い出したのは、スーパーマリオのことだった。スーパーマリオは極めてシンプルなゲームだ。基本的にマリオが取れる行動は水平方向への移動、ジャンプのみ。敵を倒す場合は踏みつけるか足場越しに突き上げるしかない。基本的にはそれだけだ。それだけだからこそ、操作を覚えるためのコストが極小になる。同じくiPhoneで使うことができるコマンドはスライド、タップ、ダブルタップ、ピンチの4つしかない。だからマリオと同じように、ユーザが一通り自由に動き回ることができるようになるまでの時間が早い。


 操作感で言えばXperiaもさほど変わらない。なのになぜ最初の「使いやすさ」に差が生まれるか?それは「1面」の差だと思う。またマリオの例えを使おうと思う。マリオの一面は非常によく出来ている。先述の、移動する、ジャンプする、敵を攻撃する、敵にあたると死ぬ、穴に落ちると死ぬ。これらの基本的な操作方法、コンテキストがすべて含まれていて、それを覚えたユーザだけが先に進むことができる。自分がやるべきことが非常にシンプルに提示される。これがキモだと思う。ステージを先に進めると難易度が上がってダッシュしてからジャンプしないと対岸に届かなかったり、タイミングを計ってジャンプしなければ穴に落ちたりするけれども、これらはすべて基本の組み合わせによる応用にすぎない。前の段階で覚えたことを組み合わせれば、必ず自力でクリアできる。だから自発的に、段階的な学習を進めることができる。


 iPhoneの1面はなんだろう?最初の最初はメニュー画面だ。ユーザはここでスライドとタップを覚える。先に進むとユーザは何をしたがるだろう?一つにはブラウジングだと思う。ユーザはここで、ピンチやダブルタップを覚える。これで情報受信機としてのiPhoneはほぼほぼ機能することになる。そしてライトユーザにはそれで十分だ。


 Xperiaはメニュー画面が少し複雑で、画面端からメニューを引っ張り出してから操作を始めるらしい。そうしてメニューを隠してしまうことで、最初にユーザが使うときに最初にひきつけられるべき選択肢が隠されてしまう。だから迷うのではないだろうか。こうした些細な差が、初心者がiPhoneXperiaを使ったときに躓くか、躓かないかの差になっているように、私には思われる。